Q:通信販売での購入を考えています...

A:
 当店も通信販売を行っており、かなりの比率で依存しています。WEB上に散在する楽器店の多くは、やはり同じような依存度であろうと考えます。多くのお客さまが、今現在、WEBの情報を見て比較検討するものと存じます。私自身もそういう部分はありますが、昔ならあちこち歩き回って比べたものの、今では「その時間も費用も乏しい」という状況になっており、WEBなくしては、全てのお買い物が達されざる行いになりかねません。時間も費用も充分ある方の場合は、節約すれば蓄財になる方法で、それ自体が直接的な「投資商品」となり得る行為ですから、一層WEBを御利用になるでしょう。最新の速い回線環境も、高速のコンピューターも逸早くお求めになれましょうから、元を取り返す意味でも、WEBを使用しない手はないのです。

 通信販売、略して通販。以前は、実店にて販売を営むお店は、「ツ〜ハン」といって嫌悪したものです。それは、何もそっちが安売りをしているから、ではないのです。「対面による信頼関係を築けない」、「継続したサポートをしてあげられない」、「ひとが働く場所が減る」。これらを憂慮した結果の嫌悪なのであって、単純に実店より安いからではないのです。しかし、年月を経るに連れ、そうもいっていられなくなりました。今では、ずっとオリコミチラシ程度の宣伝であった街の電気屋さんでもホームページをもち、お客さんとの連絡窓口に使ったり、在庫や陳列のリアルタイム案内として使っていて、場合によっては通信受注による対応となることも受け入れています。

 当店も元々は人脈知脈によっての商いから、当然のようにその轍を踏み、こうしてやっている訳です。その他楽器店の多くもそういう経緯から、時代に倣っているだけです。結果として通信販売となる場合も多いので当然受け入れます。

 しかしながら、見えない人だからといって、不出来なものを安売りしてみたりしていては、専門店の役割を労じていないことになります。また、楽器ですから、家電品のように、保証書記載のメーカーのサービスセンターに連絡して下さい、ということも出来ません。元々楽器は保証といっても適用範囲は自然崩壊程度に留まります。音が眠たいとか弾き辛い等調整調律に起因するものは人により感じ方も異なりますので、各々別途のサービスとして本来有償で提供されるものです。とはいえ、何らかの理由で来店が叶わず、また、何らかの理由で身近で供給を受けられないであろう、通信販売のお客さまに対し、これは「コノマンマが商品の仕様なのだから」この状態でのお渡しです、御希望により調律承ります、とやっていたのでは、最後には運送屋さんばかりが儲かることになってしまいます。こういうことは、不出来なものの安売りと謂われかねないのですが、それは、楽器ならではの特殊な事情で、楽器屋を名乗るなら、何とかして避けたい状況でもあるのですが、楽器はいろいろな種類があり、全てに精通している楽器屋さんはとても少なく、多くの中のどれに詳しいかは、会ってみてもすぐには分かりません。分かるように品目を限定し、専門店を謳っているのです。特に弦楽器、それもバイオリン系統は、何ともつくりも用途もハッキリしない所為で、理解している人の数はこれまた極端に少ないものです。発生からして既に古楽器の領域ではないかと思うものがよりによって現役バリバリですから、対策のうちどころさえ既に見当たらないのです。

 通販デパートのカタログやウェブサイトならば、価格で勝負も結構でしょう。専門で楽器を扱える体勢がない代り、元々単に定価相手で価格を見せて選ぶよう奨める体勢ですから致し方ありません。そういうところから買い求めることを選ぶなら、近々高額な調律費を必要とすることはある程度認められたものと解釈せざるを得ないでしょう。購買者は価格だけを見て「品の購入素材」としたのですから、そこに何らか作業を附随して納入することは不自然同時に不可能でもあるので、売手に罪は全くありません。されども、弦楽器にはどういう調整調律が必要か、考える余裕も時間も知識もなく単に弾くことを目的にしている、通常は初心者と表現される買手の立場では、何か、ツカマサレタような気になり、結果「通販はダメだ」と思いたくなるでしょう。でもこれには「勉強不足であった」厳然たる買手の事情があり、これだけはどんなに愚痴っても、少し嗜んだ誰の目にも明らかなので、悔しさになってしまうのもこれまた仕方ないでしょう。通販デパートは何処も、気に入らなければ返品可としていますが、これを理由に返品というのは、特別事情がない限り、憚られもします。

 仮にも弦楽器専門店を標榜する店なら、標準装備の弦で、まあ普通に演奏出来る程度には最低でも整えておきたいでしょうが、案外手間なので、余り安価な楽器では難しいのが現状です。無理すれば出来ますが、定価の範囲では大抵収まりが着きません。大体楽器というものはどんなものであれ、それに手を加えることを仕事に出来る迄には並以上の経験が必要になりますから、大抵その自負を以て専門店として営業しています。そのため、手を掛けた分が補えるだけの利益を出せない商品は扱えないのです。でも、無理を承知で各々の店で努力して取扱商品の最低価格を下げる努力は見られます。専門店は粗悪品をふるいに掛け客先に到達させない役割も果します。どんな品にも最大限の手を加え、劣悪な状態での販売を避けています。多少割高はその努力代で、直接買手の安心即用に結びつく商品の一部です。値段が安くなれば、音に深みがないとか、仕上が良くないとか、安いなりの特徴はありがちですが、元々使えない品やそのラインナップに店として意味が感じられないものは、仮令メーカーのカタログにあってもそもそも取扱品目に入れませんし、出荷されることもありません。また、ある程度を越す額のものについては、初めての楽器なら何らかの推奨をアドバイスされますし、買い換えなら、もしかしたら現有品の方が活きる可能性もあることさえも示唆するもので、つまり、売るばっかりにはなりそうにもない話も続々出され訳が分からなくなる人もいるものですから、鬱陶しく思われる場合もあるようです。

 楽器店は趣味のお店です。無論演奏家にとってはドックでもありピットでもあるものですから、それなりに頼られたいものです。余分なお話もどんどんしますね大抵は。それでも、通信販売元、と理解される場合があるのも致し方ないとは思いますが、好きな人同志の交流の場でありたいとも願うところで、何か伝授したがるとか、持論の押し付けっぽいお話になることも、あるもんです。

 要求し出せば限度がありませんが、突き詰めていくとどんな名品を捉まえても五つや六つ、時には七つ程度の容認しなければならない癖はあるものです。但し、余り楽器を知らないとか、そもそも全然分からないお店で買うなら、癖を探す以前に演奏になり得ない、或いはお求めの方のレベル次第ですが演奏に取掛かる以前の問題を背負ったままだったりもするもんなのです。バイオリンでは、うちみたいな店でさえ、単にブリッジを立て、糸を張れば即演奏出来るという有り難いものにはまだ巡り会ったことがありません。魂柱は楽器の中にありはしますが、強過ぎて響きを壊すばかりというのが、所謂新品の実情ですし、今迄何人が使ったか分からない百年も経つものでさえ、十中八九は調整しないと弾きたくなりません。場末の店に廻って来るのはその程度とアキラメはするものの、楽器と了承出来そうにない作りのものでない限り、それなりに鳴らしてあげることは出来るもんなんですよ。

 楽器を知らないお店から安く買っても大丈夫か、少々高くても楽器を少しは知っていそうで何らか手当てをしてくれていそうなお店から買って何らかの安心や即用性能を期待するか、判断はお任せ致しますものの、前者はうちでは大体検品前のレベルであり、まだ倉庫で眠る在庫にさえなり得ません。旨く返送されず生き残って倉庫に入り、また取出して来て調整したとしても、せめてうちの者誰かがオハコを一通り弾いてそれなりに満足出来ない限り、売り物には出来ません。それが専門店の通販です。ツ〜ハンで買ったからと思われなかったとしても、本来演奏しようがないような状態で到着した楽器を試したからといって、楽器ってやっぱり難しいからヤレナイと、旋律に近付くことさえ出来ず諦めてしまう「初心者」さまが生まれる可能性を、せめて取り除きたいと願うのです。

 通信販売にも、いろいろな品質のみたてかたがあります。何を規準にせよと言えといわれると苦慮します。大体の専門店では、カタログに載っている状態の侭で提供するのは躊躇われるだろう、ということです。

 あ、お断りしておきますが、数百万円という楽器のお客さまが普通に出入りするお店には、こんな悩みなんかないはずですよ。数万円、数十万円のお買い物を楽しんでもらう方向付けの姿勢のお店の、悩みです。お認めいただけるなら、つ〜はん大歓迎です。きっと、お楽しみ頂けましょう。

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