ハリケーンランプとは

そもそもランプというと灯火の総称ですが、灯油ランプが旨く作れるようになる迄は、持ち歩く灯りというとトーチ(たいまつ)かキャンドル(ろうそく)でした。やがて金属加工特にプレス加工技術が発達すると、灯油ランプのバーナーが小型化出来るようになり、ろうそくに取って代わることが出来る満足な性能の携行ランプが出来るようになりました。これはその中でも発展した形式のランプで、此所迄来て精々初めて「ランタン」と呼んでよいものになったのだと思います。元々ランタンとは提灯のことであり、周囲にガラスが貼られたりした四角い箱の中にろうそくを入れて使っていたのです。日本風には蛇腹状の所謂チョウチン、あの「御用、御用」みたいなののこともランタンといいます。しかし統一して考えうることは、風にある程度強いことがランタンの要件であろうということです。
ハリケーン型という形式呼び名も誰が最初にいったのかわかりません。発生は意外に古く、1800年代の前半には原型に近い製品が世界各地で発生しています。本来ハリケーンランタンとはいわず、ハリケーンランプというようです。それは恐らく、漸く小型のバーナーが出来るようになった時代にはまだランタンは「ろうそく用のもの」という意識があったためでしょう。
上図左は代表的ハリケーンランプです。小さいものは二分芯、大きいのは五分芯というもので、二分芯の場合は芯の幅が7/16インチ、明るさは2カンデラ(蝋燭2本分)、五分芯の幅は1/2インチ、明るさ8カンデラ(蝋燭8本分)程度です。
明るさはランプ自体の大きさに比して強く出来ることはこの時代には大体分かっていました。電灯のように技術で何とか小さくて強い灯火をつくるには至っていません。それは発熱を冷却する為に必要な躯体がどうしても必要になる為なのです。

上図右は、提灯ではありますものの、テーブルランプのタンクを工夫して吊り装置を着けられるようにしただけのもので、同じくランタンとはいいませんし、屋外には不向きです。


燃える仕組み:

ハリケーンランプは、その名の通り、炎から上がる気流を煙突で受け止めた時に、殆どの熱気は煙突から抜け出ますが、一部はホルダーチューブ(煙突の両脇のパイプ)からバーナーに戻り、バーナーの外周の穴から吹き上げる際にカバーの芯が出ている隙間を通り、炎を平たく押すことで形を整え燃焼性能を上げるようになっています。台風の直径断面の形に似ている為にその名を与えられているのです。つまり、左右のチューブもバーナーのカバーも、温風の流れを制御する大切な役割を担った構造部品であり、飾りではありません。また、こうすることで外気の風からバーナーを保護出来、野外でもある程度安定した性能を得られるので、古くからアウトドアランタンとして屋内用のランプとは違う使われ方をしたものです。それでも野外で使うと多少なり風の影響を受け煤が出ますが異常ではありません。自然な力で燃える炎を仕組みで多少助けている程度ですから致し方ありませんね。でも200年以上も基本構造を変えずに今に至っています。火力が弱くても、ジェネレーター方式(コールマン等)に喰い潰されずに生き残っているのは、その腹持ちの良さからです。


ハリケーンランプの使い方

最初にタンクの口から5mm位下迄燃料である灯油を入れます。白灯油をお使い下さい。といっても大体今は茶灯油が売っていませんので普通に売っている灯油です。燃料を入れたら、芯に油が行き渡る迄20分くらいはジッと我慢で待って下さい。ここで慌てて火をつけると、芯を1mm失ってしまいます。

着火には、ホヤ上げ下げハンドル(ホヤの横に突き出ている)を下げ、芯をバーナー(芯が出たり入ったりする孔)の上端から2mm程出した状態でマッチ等で火をつけます。その後、ソロリとホヤ上げ下げハンドルを戻します。

火力調整ですが、それから徐々に、つまみを廻して火を大きくしますが、煤が出る一歩手前が最大火力です。芯が新しいうちは、ツノといって、芯の角の部分から鬼のツノのように炎が立ちます。ツノが出ないように調整しますが、普通はサンパツが必要になる場合が殆どです。
サンパツは、良く切れる鋏を用意し、ランプの炎を消し冷まし、煙突の上のリングを上に引き上げて、ホヤをそっと倒します(上げ下げハンドルのない方に倒れますから割らないように手拭い等その方向にひいておいてください)。そして、バーナーから2〜3cm、芯がへたり込まない程度迄芯を上げ、角ッコの繊維を、ほんの少しづつ、大体切り屑が綿ボコリのようになるように刈り込み乍ら、角を一辺1mm位落とすような感じで、でも芯の断面としてはまあるくなるような感じに刈ります。この辺りはおばあさんの知恵のようなもので、伝承されるしかない感覚です。勘が分からない場合は無理せず、鋏をチョコチョコっとやってちょっと刈れた感じがしたら試しに点火して、炎の上が真ッ平な感じで、なんといいますかこう「ぽわっ」としたような、幅広のウチワのような姿に灯るよう、少しづつ形を調整して、良い感じを掴んで下さい。炎の角をこうして止めないで使い続けていると、充分明りを得られないだけでなく直ぐ煤がホヤを真っ黒にしてしまいますし、また野外では風で暴れた炎の角がホヤを割ることがあります。


バーナーをひらいたところ。
どのハリケンランプも大体同じ形をしている。


煙突の持ち上げ方
ベイルを立てた状態でリングを絞るように引くと旨く開く。


ホヤのもちあげ
ハンドルを下に押さえこみ、切りかきの方によじると上がったまま止まるが、降ろす時にバシャンと降ろさないこと。


良い形の芯は、角が自然な感じで丸くされている。これは自然になるのではなくて切っ掛けを作ってやる。切っ掛けは、散髪をうまくやることである。


ポワリとした良形の炎は、燃費よく明るい。


良い炎の状態:
ランプにとって良い炎の状態とは、同時に煤や臭いを出さない燃焼状態のことを指します。
現代家屋は多くが火災報知器・ガス検知器・煙検知器等によって監視されていることが多い為、屋内で炎火(えんか)による照明を楽しめる方は自己責任を熟知し自動監視を用いない暮らしをされている方に限られますが、それでもやはり「良い炎の状態」で燃焼させないと灯体は勿論、芯の消耗も加速します。


芯の下げ過ぎ
バーナーが加熱し、金属の腐蝕消耗を早めます。芯にはガムが定着し易くなり、長時間このまま使うと芯が動かなくなります。

丁度良い状態
炎の赤い部分の下の透き通ったところがバーナーのデフレクタを超えるか越えないかというところ。

芯の上げ過ぎ
炎の透き通った部分がデフレクタを大きく超過しています。芯を過大に消耗し、燃費も悪く、ホヤや煙突を傷めます。

上図の、丁度良い状態の炎の時に、如何に赤い炎の部分すなわち明るい部分が大きいかは、芯が太いか細いかだけでは決まりません。良いランプの良いバーナーとは、此の状態の時に大きな明るい部分を作りだせる構造のバーナーで、数値では殆ど具現化出来ず、職人技に関わってきます。どれも似たように見えるものですが、高性能高品質は極々小さな、本当に慣熟し、また幾つも使ってきてはじめてその違いを感じられるようになります。使い心地が良いものに巡り会うと、肌身離さずに置きたいと思うようになるものです。


お手入れ:

どんなに丁寧に使っても、やはり煤や油ミストは避けられません。ホヤを取外すには、トップリングを持ち上げホヤを倒し、クレードルから取外して行います。しつこい煤は灯油を軽く湿した布で拭き取り、充分に乾拭きし乾燥させます。ホヤは割ると手に入らないものが多いので、作業は入念に。出来れば柔らかい布を敷いた上で作業して下さい。立って手に持って作業をすると、落とした時に必ず壊れてしまいます。金属部分の手入れは、やはり軽く灯油を湿した布で拭き、乾拭きします。水拭きはサビを誘発しますので避けましょう。煙突の頂部裏側は刷毛で煤を払いますが、それを怠り必要以上に溜ると剥がれおちて来た厚みのある煤の塊が炎に跨がり形を壊し、ホヤを割ることがあります。芯は減っていきますが、空焚きをしなければかなり長い期間使えます。芯の先端の煤は、炎の形を乱す程溜らない限り除去する必要はありません。

つかわないときは:

こういうもの、使い始めとかソウイウ時期は兎も角、大抵の場合は眠っています。問題は、直ぐ叩き起こせるように保管する手立てであり、これまでどうこう申し上げた使用法の、一番大切なことが、コレ、ダと思います。
暫く、という時間ですが大体一ヶ月以上は、使わないだろうな、と思う時は、燃料を抜き切って下さい。ランプの燃料は、複雑な内部形状のタンクに入っている所為で、なかなか完全には抜けません。よって、燃料を注入口から抜いた後、仕舞運転という燃焼行為が必要になります。空焚きになると芯を減らしますから、火が小さくなったら直ぐ止めます。
その後、安全に置くか吊るすかできればそれでもよいですが、何かと纏めて収納する場合は、新聞紙等に包んで下さい。湿気の害を減少させ、錆びの進行を抑えられます。

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