買取り価格

中古品の市場とは面白いもので、品薄だから困るということはない。
「中古品屋」は困るかも知れないが、市場全体としてはちっとも腹が痛まない。
余りに腹が痛まないと、その品が置かれるカテゴリの中古市場が無くなる事も容易に想像できる。
なければ、必要とされないし、中古を求むと云うこと自体が無い物強請りなのである。

中古の品の製造者は、メーカーではなく、それを使用し、滅し切っていないユーザーだ。最近は頓に蚤の市的にユーザー間で処分される場合もあるが、本来古道具を扱う商人に買ってもらうのが本筋である。そこで問題になるのは値段である。

幾ら一所懸命に狙って入手した物であっても、手放すときは当然二足三文になる。これは至って当然である。しかし最近は人間の器が小さくなった模様で、商人が買い上げる金額が安いと云う向きもあるがたかく買って貰うからには後の責任迄負う必要がある。後の責任とは、次の買い手の存在とか、手渡ってからの事を云う。

古道具には三重の値段がある。なにも同時進行する訳では無くどれか一つで、どれかの対象に向けてセールスされる。一点ものなのでそうするしかないのである。

先ず、「市中で売る値段」つまり店頭売価である。これは、最も高い。店頭売価は、その品を気に入って欲して持っていく人が利用する値段。つまり真っ当な買い物の値段である。

次に、「使う人の値段」つまり事業者間で取り引きされるプロユース価格である。この価格で取り引きする場合には相当な部分が買い手に負い被せられる。買い手はその「実業経験」で負い目を「安上がりに」克服する努力をすると「市中売価」より遥かにお得になる訳だ。

最後に、一番安い値段。そう、「処分価格」である。引き取り手に困り経費倒れになるような特に大きな体格のある商品の場合、経過的に何処かで始末する必要がある。競売等で処分する場合がそうだが、その際、買い上げ原価と移動のコストを合わせた程度の値段である。ここまでくると商売人は稼ぎようが無い。

買い上げ価格は、処分価格より当然低い。脚が無い(重い、大きい、根がある等)ものは移動コストを引き去られるのでさらに安くなる。

ここ迄話してボートに初めて漕ぎ着ける。

ボートを買い上げに出すとき、主は諸メディアに広告されている価格を思い浮かべるのが常であろう。これは、先の解説で云うところの「市中価格」である場合と「処分価格」である場合とに別けられるのがボートの特徴である。同じように人間が乗る品である自動車と比較すると、使用する環境に制限(道路の幅とか鋪装されてるかいないかとか)が無く、「乗り」乍ら何用に供するかの「道具」としての意味あいが追加されている為に品毎の買い手の性格素質の違いが余りに大きいから、次なる買い手の置かれている状況が面一でない為に生じるギャップなのだ。
ギャップと云うのはこういうことである。ある国家がある。それが軍備を欲している。それは、小さく、何処に戦を仕掛けるでもないが何かあってイジメられて、されっぱなしじゃ嫌だから何か持とうという。仕掛けないなら「爆撃機」は要らない事になる。いじめっこを撃退するだけだから「戦闘機」もそれなりの「迎撃戦闘機」であれば事足りる。どれも性能はマルデ違うので転用は効かない。でも「迎撃戦闘機」を要らなくなる程持っている「小さい軍備」の国家がそれほどある訳でもないから、なかなか古物は買えない。漸く出てきた時には客は一国きりだが需要は100%だから「結構高い」。ということだ。でもそれを待っていると「いじめられてぼこぼこになるかもしれない」から、慌てて新品を注文するのである。話があっちこっちにトブのを、ギャップちゅうのだ。

新品の時の価格はともあれ、古物として市中に出る時の需要が多い時は高くなるし、少ない時は安くなるという相場的な部分も無きにしも非ずであり、非常に難しい。

ボートは輸送にかなり費用が掛かり、それを引き去るともう買上げ金額が算出出来ない(マイナスになる)場合もかなりあり、『買われる事が幸運な事』になることも実に多くあり得る。また、その品が完品でなく、如何なる場合も販売に当たり何らかの修復を必要なら、さらにその費用を見ておく必要があるからなおさら買ってくれればラッキーとなってくる。

こういうことを念頭に置けば、100万円と広告されているのと同じもんを買って貰うに、5万円付けば「幸せな方だ」、とさえも言えるのだ。

逆に品物の状態が良くて、タマタマそれを欲している人がいれば、意外な高値で「そのまま」持っていって貰える事もある。「超ラッキ〜」というやつだ。余裕がある人は、必要無くなっても「超ラッキ〜」が巡回してくる迄待っている事ができる。これはブローカシップを執ってくれる商人に対してのみ要求できる方法である。今はこうして売れる「程度」の品も少なくなったものだ。

舟と付合うことは、そのうち別れが巡ってくることでもある。別れを綺麗にしないと、さらに傷口が広がるケースも多く見られるのが別に実業的にも生活的にも中々必要な位置に置かれないボートの特徴。買う時は勿論だが、別れもスッキリさせる。上手な付き合いとはそういうことをいう。