標的の設定

射的に標的がなければ興味半減です。なんでもいいからその辺の何か撃ってイイヨでは、馬鹿にされているのではないかと訝られても仕方ありません。標的の設定は、射的を提供する個人や団体の、究極のスポーツマンシップとセンスが問われる重大なプロセスなのです。

でも御心配なく、今はいい標的が先人によって作り出され、どれかを選んで使う銃が可能とする適当な距離に設置すれば足りる時代になっています。ただ、その使用に関して日本では、射撃場の設置規則から使える銃種や距離が指定されているので、制限があり自由にはなりません。エアーソフトガンを使う場合は、これらのデータをもとに自作すると宜しいでしょう。

ライフル300m標的

大変由緒正しいもので、第二回近代オリンピックパリ大会の時から使われています。一番外側の1点の外線は直径1000mmの真円、中に向かって一点100mmづつ直径を減じていき、中央10点の外線は100mm、その中にあるX圏という所謂大当たり圏は50mmです。
黒丸の部分は直径600mm、大口径ライフルではこれを300mの距離で処しますが、その距離ではこの大きな黒丸も単なる点粒にしか見えません。

充分大きいので沢山撃ち込んでも弾着を収容し切るのでいろいろな練習やローカル・マッチに使用出来るいい的です。

エアライフル10m標的

1966年に国際公式となったエアライフル競技に使われるもので、日本人には一番馴染み深いものでしょう。1点の外線直径は45.5mm、中に向かって1点5mmづつ減じ、最終的な10点の部分のテンは0.5mmとなります。10点がないように見えるイジワルな標的ですが、黒丸の大きさは10mを空気銃で狙うには丁度良く、点数圏を余り厳密に追わなければ幾らでもローカルルールを作れます。

エアソフトガンでは、一部高性能なものの性能がこの大きさの的に見合っていますので、工夫してローカルマッチを楽しめます。大抵のエアライフル射撃場で頒布を受けられます。

エアピストル10m標的

1970年から国際公式として競技に使われるこの標的は、大きな変更なく今迄使われています。1点の外線直径は155.5mm、中に向かって1点16mmづつ減じ、最終的な10点の部分は11.5mmとなります。その内側にはX圏が5mmの円で与えられていますが、これ94年に実施された変更で、これに達しているとインナーテンと呼ぶ命中と出来ます。黒丸の大きさは59.5mmで無理のない大きさです。

人数的に制限があるエアピストル競技や、日本の銃規制にそれを適合させピストル射撃を行うハンドライフル競技という、極めてレアな競技に使われるものですが、射撃場では猟用空気銃の練習等にも使われており、ニッチな規格のものの割には馴染まれているものです。
程よい大きさなのでソフトガンで使う場合は任意の距離で種々楽しめますが、エアピストルユーザーが少ない射撃場では頒布目的での保有はないものです。

フリーピストル50m標的

これまた超ニッチ種目の標的です。22口径の無制限のピストルなら50m、その口径の女子と32口径から38口径のピストルなら25mでこれに挑むのですが、正直な話日本で常時これをプレイするシューターは数名です。しかし、この的は実に使い易く、大多数の狩猟用大口径ライフル射手が練習や調整にこれを利用し、技能検定にも使われます。1点の外線直径は500mm、中に向かって1点50mmづつ減じ、最終的な10点の部分は50mm。その内側にはX圏が25mmの円で与えられていますが、これも94年に実施された変更で、これに達しているとインナーテンと呼ぶ命中と出来ます。

クレー射撃用ピジョン標的

直径100mm、高さ25mm程で、重量110グラム程度です。散弾銃の射撃で使う標的の代表です。欧米では放出機にて投じる普通の使い方の他、他の人が素手や手持ちのランチャーで投げたり、自分で投げて撃ちます。日本ではトラップ・スキート各々規準に合致する射撃場で、放出機からでしか撃てない標的です。クレー射撃場で頒布してもらえる場合もありますが、ソフトガンでは割れません。ライフル射撃場の的枠には貼らないこと。換的壕や周囲が汚れます。素材はアスファルトですので、灰皿等に流用すると溶けてしまい、調度としても大変壊れ易く、他の使い道がないものです。そのため、参考出品です。

マッチ・ルールを作る場合、これら標的の記す点数圏をそのまま利用出来るとするなら、どれも本来それが設定されている公式競技銃を使われない限り公平性が極度に失われます。

エアライフル、と一口にいいますが、10mの先にある僅か0.5mmを打ち抜く性能に特化したものと、いろいろな距離でいろいろな大きさの対象に何らかのダメージを与えて動きを鈍らせたり止めたりして捕獲する目的で作られたものとは、根本的に性能面での違いがあって当然です。前者は射台の他では撃つことはなく、規則上も重量をかなり大きく設定されているので、とても持ち歩けたものではありませんが、後者は一日中山野を手で持って歩き回る上、ポンプやスプリングを圧縮すると云う動作もこなさねばならず、それら運動が常に可能なように成る可く軽く作られていますし、余り近距離で使われることはないので、10mという距離では結構荒れが出て纏まり難いものなのです。ソフトガンになって来ますとこれは更に顕著になります。軽い弾で、それを飛ばす精一杯の速度しかないものから、5m、10mといったきりの良い距離をこなせるものまでいろいろなものが商品として出回っています。

性能差のある器具の射手を混在させ成績を合載してしまいますと劣る器具の射手は大きな不利益を蒙ります。設定者はその幅を極力狭める努力をしなければなりません。時間を割いて努力をしてかつ会場に訪れプレイする射手に公平感のある試合を提供しなければなりません。
秀逸な設定は、時として歴史や産業を牽引します。上記の標的と、それを使う距離や銃種の設定はその最たるもので、巨大なマーケットと雇用と人材を育成した代表的なものです。それらが後ろ楯として備わると、必然として競技は絶対の信頼を集め、ルールは尊ばれ、上位を望む熱心なプレイヤーに囲まれ醸成されていきます。

ここに例に挙げた国際公式競技の標的はその昔のプロフェッショナルな経験の蓄積から纏め上げられたもので、無理なく全世界の器具製造者やプレイヤーを納得させ得る素質が証明されたものです。中には優秀故複数の競技に使用されるものもあります。どれも定められた銃と距離では存分に難しく、しかし不可能ではないのです。この難易度と満足不足の感覚がバランスよくとれ、プレイヤーの魅力を繋ぎ続けられるものが佳い標的なのです。

絶対無理であったり、または簡単過ぎて上位の確定が難しいものは、よいものとは言えません。標的は単に撃って壊れたり倒れたり孔があいたりすれば良いものではありません。痕跡を残したり命中を表現したりすることが嬉しく、楽しく、また苦しくなければいけないのです。

既存のマッチに参加したり、それを用いて自分を磨くのもいいですが、仲間を集められる面白い、楽しいマッチを作ってみるのも、シューティングプレイの過程にある一つの経験です。仲間が作ったマッチをプレイしてみましょう。自分が作ったマッチを試してみましょう。より深く射的の世界に入れること請け合いです。