元折れ銃はガタが出るからといって自動銃など単身銃を使う人がありますが、散弾銃の包底圧力はライフル銃に比べると格段に衝撃的で高いので、ボルト式や自動式のラグまたはブロックが必ず丈夫かとなるとそれは疑わしいでしょう。

元折れ方式は、銃身と踝物を繋ぐヒンジと、閉鎖させるボルトラグとのベクトル上分散と、銃身と踝物・銃台の重量による位置のエネルギーと作用時間の相関関係で閉鎖強度を出しています。加工精度はそれをさらに助ける為秀逸な技巧が不可欠ですが、ボルト式や自動式の閉鎖機構は全く自然や物理のエネルギーに助けて貰えない「機能」だけが頼りです。加工精度はマイクロメーターで測れば見える範囲で良いのですが、乃ち「がっちり作り過ぎると」動かなくなって困るものでもあります。位置を保とうとする慣性エネルギーを閉鎖の助けに利用出来ないので、小さな部品の張力のみが頼りです。もし元折れ銃が粗悪な作り、すなわちあうべきところがあわず、いうなればガバガバだとすれば、幾ら位置のエネルギーに助けられたとしても、高い精度で相合わせられたピッタリのものより早く消耗します。

経験からなので一概に言えませんが、良質高価な水平二連散弾銃で、閉鎖に微妙なガタツキが認められる迄の発射数は5万発程度でしたが、所謂安物(日本製ではなく欧州製です)は八千発位でそうなってしまいました。上下2連ではベレッタのトラップ銃を25万発撃っても感覚出来る閉鎖不良は出ませんでした。ニッコーやブローニング、ミロク銃はそんなに撃ったことはありませんがどれも5万発等当たり前です。自動銃の時は、回転不良が頻発したり異様な反動を感じたりするようになる迄が似たようなところとして考えれば、ブローニング自動五連で比較的軽装の装弾ばかり使って五千発、ベレッタのボールロック反動式では三千発、同じくベレッタのガスオートではやはり五千発位でジャムりが出たり閉まりきらなくなったりということが起こりました。手動給弾の連発銃は、送りのやり方や場面によって旨くいかないことが、銃の健康状態に拘わらずあるものなので、個人的に好んでいません。
飽くまでも私用のデータですからどうしても頼りなさを感じます。5万発耐えて修理した水平二連は新銃で、猟野と射撃両用乍ら慎重に使用していますが、安物は数十年経た古物でした。安い猟銃は普通年に数十発程度しか使用されない例が多く、数十年経過の中古と云っても状態はよく、以降も強装弾を使った訳ではありません。上下二連は相性がよくてやたらと撃ったのが偶々ベレッタ製ということで、他のものは耐久性等でないその他の理由でその辺で手放して持ち替えただけです。銘柄を推奨する積もりはありません。自動銃は使う場面がそもそも荒い農漁業害駆逐任務で、通常の稼業の傍らとはいえない拘束時間が多忙を誘い、新銃とはいえ碌に手入れもせず通年ぶっ通しで使ったものですが、使い道がそういうものなので多少のジャムなど構わないところでも、それが元で怪我でもしたら面白くないので、分解掃除やゴム部品交換程度の手許修理で戻らなかったら直ぐ取り替える法を選びましたが、支給装弾が3インチ強装弾だけだったので経済的理由からも自動銃が選びやすく、やはり総じて隊員は2連の使用を避けていました。

これらを見て思うことですが、散弾銃はかなり耐久性があるとは感じます。こと元折れは、高い分だけの耐久性は見込めそうには思います。
損耗が起きたからといって直ぐに銃が使えなくなる訳ではありません。かなりのレベルまで修理で延命出来ます。大抵の自動給弾不良は部品交換で直りますし、閉鎖不良も修正出来ます。但し修理後は新造時程の耐久性は望めず、大体半分くらいでまた修理の必要が出て来ると考えていいと思いますが、修理代は銃の代価によらず相応に掛かるものなので、元々安い銃なら修理代がそれを凌ぐようだと捨てる方を選ぶ、というだけのことであり、たまたまその年代によく撃ったというタイミングが重なって結果として所有年数が短く感じられた話を聞いただけだったりするでしょう。

生涯所有しても、数万発を撃つ人の比率はそれ程多くありません。自動銃は構造上埃や水を中に誘い易いので、それらが起因する作動不良も考えられます。安物であっても当たる性能は変わりません。ガタが出る経験をしたとして、修理で復帰する消耗でも、個人の感性で弱いと思う人も居るでしょうから、伝聞の経路や口調によっても受取られ方は違って来ると思います。