空気銃弾

英語で錠剤のことを指すペレットがよくいわれていますが、ほんとうはDiabolo Lead Pellets・ツヅミ型鉛弾だそうです。

まるでこれだけしかないように思っている方もあるようですが、球形のものも、砲弾型のものもあります。球形のものはBB(Ball Bullet)といわれ、主にアメリカで屋内極近距離での的当てに使われ、銃も軽便なつくりで現地でいう所謂玩具銃用です。勿論それにもツヅミ型のは使えますが、鉄板に挟んでゴロゴロと転がして再利用する、という目論見からは外れることになるそうです。

現在は空気銃も大層発達して、用途別に様々なものがつくられるようになっていますが、元々はというと、まあ射的というものに触れてみる、程度のものでした。写真にあるのは戦前の玩具銃です。

玩具といっても今では許可を受けなければ本来持てない規制を受けるものですが、当時(1958年頃迄)は学習雑誌の通信販売の定番商品です。仕掛は今のスプリング式と同じ、銃身をブレイクダウンするとそれがテコの代わりになってバネを圧縮すると、バネに被せてあるピストンが引き金の反対側に付いている掛かり(シアーというんですが余りに稚拙)に引っ掛かり、弾を込めて戻し、引き金を引くとバネが解放されるから弾が出るというだけです。今のエアガンの、エアコッキングタイプと全く同じです。
命中精度は激烈に悪く、狙ったところに当てられるように調整するのも大変です。何より大きなピストンが弱いバネに押されのっしり動くものだから、切れの悪い反動をどうすることも出来ず、反動は銃口から弾丸が離れる以前に狙線を乱すので命中は運任せという性能です。発射弾の作用力も知れたものです。私は少年期、道を自転車に乗って走っていてこのような銃で撃たれ、偶然にも額に被弾しましたが、何かばちっと来たなという感じ、見上げると丁度真横の民家の二階によく知った同年の子供が銃を折ってもう一発入れようとしていたところなので、玄関から上がり込んで居合わせた家人にその旨を告げたら、ソイツは一晩門柱に縛られており、後数日学校では見かけませんでした。その時代は既にこうしたモノは許可制になっていた筈なのですが、前世代の購買品が残存していて受け継がれていた好例です。しかしその宅の御亭主はソイツを人に銃を向けたというので痛く扱いたようです。何であれ銃なり弓矢なりの飛び道具を人や鳥獣に向けてはいけません。相応の資格がある人が、正当な理由を以てしても、躊躇い乍ら行なわれるべきことです。
閑話休題、これらを造っていたという人から聞くと、大層量産し品質はばらばら、バネも強くすると銃身が曲がってしまう等起きる為バネ屋で売っている安物を用い、閉めた積もりが自然に開いてしまったりは当たり前、弾も精々飛んでも30m位、格別記憶していることは、売れる割には儲からない、特に台尻の木工代が嵩んで・・・とかいいます。
子供らはそれでも結構高価だったこれを買うと喜んで射的に興じるものの、子供向けの射的を射撃にする能書のようなものはない(というのに通販教材という触込みだった)のでたちまち飽きて外へ持出しスズメなどを虐めるのですが、追い散らすのが関の山で余程の幸運が手伝わなければ猟獲出来なかったといいます。
それを体験した年齢の人でその後空気銃に興味がなかった人は今でも空気銃なんてといいますが、戦後も20年経つとUITはこれを成長させたものを用いる正式競技を興しており、それに発奮した欧米の製造者は高品質なものを続々産出していました。

用いる弾は、そんな玩具銃の時代には、よく当たりそうだとか、実際よく当たった覚えのある人が多いタイプのものに纏まっていきます。丸いもの、棒状のもの、砲弾型、いろいろあったがやっぱりツヅミが一番良い、と淘汰されていったようです。しかし用途によっては他の形のものも欲しいものなのです。

現在の空気銃は、一般的な.177口径のものを例に取ると、一番弱力のものでは前述のBBを使うもので初速80〜100m毎秒、続いて競技用エアピストルの初速120〜170m程、競技用エアライフルが180m程と続き、猟用のものは専ら150〜400mです。但し現在主流の蓄圧タンク式の猟用銃は押し並べて400m毎秒以上をたたき出します。
これは単なる弾速の違いに留まらず、発射する弾丸の適否がその性能で大きく変えられるべきであることを示しています。
例えば、猟用のマルチアクションポンプ銃だと、一回ポンプしても弾は出るが、十回ポンプしても撃てる訳ですが、使う弾が一回の時と十回の時とで同じでは、同じ場所に当てることが難しくなるのは普通です。これは大口径ライフルを使っている人は常識的に体験することです。弾体の重さや構造によって、同じ薬の量でも着弾点が上がったり下がったり、横へいったりするのです。全く同じことを空気銃でも体感されます。もし、余りに弾着が不安定な時、猟用ポンプ銃であるなら、一度ポンプを減らしてみましょう。それでだめなら、もう一度減らしてみましょう。逆に増やした方がよい結果を得る場合もあります。勿論減らせば弾丸としての作用力は小さくなっていきますが、当たらなくて困るよりは当たった方がいい訳ですから、狩猟なら対象を小型のものに変えればいいのです。標的が相手なら、勿論当たる方がいいのです。逆に強くして大きな狩猟対象を得たいなら、弾を変えてみるのです。銘柄を変えるというのではなく、同じ銘柄でも重たい弾に変えるという感じで試すと良いでしょう。
出力が固定の競技銃やプリチャージ、炭酸ガス、スプリング式の場合は、まっしぐらに弾そのものを変えて合わせていきます。重たくしたり軽くしたりは当然考えられることですが、こと競技銃の場合は微妙にサイズを変えてみることも重要です。同じ.177口径4.5mmと公称されていても、空気の出方のタイミングの問題や、その量、吹き出し時間の短い長い、そして気温や湿度、いろいろな要因が弾着範囲の大小に影響します。標的射撃の場合は距離が決められていて、狩猟のように努力や根気で近付くことは出来ませんし、標的そのものは充分に小さく、点数圏は接近している為、極力小さい弾着範囲に抑えられるよう、無駄に思えるトライが絶対必要です。クラブに所属している場合は、皆で取り敢えず違う銘柄違うサイズの弾を買い集め、弾選びをお互いにやり易くするのも手段ですが、一個人で楽しんでいる場合は、無駄なようですが一先ずひとパックずつ弾を数種求めて試しましょう。手持ちの固有の機種に詳しい専門の射撃競技銃店で教わるのも勿論手ですし、もともとそういうデータを持っているお店から割高でも銃そのものを買う(競技銃専門店は会員価格等を持っていて逆に割安です)ことも検討すべきですが、特に中古銃を求める場合、空気銃は装薬銃と違い、分解整備を予め受けておいた方がいいものである上に、前の使用者のチョイス情報等も提供されうる為、格安の現状販売店より情報料としての価値を生みますので、折角買った弾なのに、ということが起こらず済む期待が持てます。競技になる程のものごとは全て習い事の果てに存在しています。余計に思える代価も、情報を習う月謝と思えば全く無駄ではないのです。

エアピストルを撃つ人がエアライフル用のペレットを使って違和感を感じないとすればその人は初心者です。しかし日本に於ては先ずそのようなことはありません。それは人数の厳格な制限の中で行なわれる一種の最上位の種目だからです。最上位に於ては、常に最上の情報が提供されるので、初歩的な間違いともいえるこうした選択ミスは起こりようがないのです。
ところが、昔と違って現在は多種多様なデータスペックのペレットが氾濫しているので、初心者が現れるところではこうした間違いは往々にして起こります。エアライフルを持ち、道具も着物も揃えていざ練習を始めようと教本を開いても、固有の銃にどの弾があうのか等は載っていません。そこで弾速が出るからと軽いほうの弾を使うと、銃身の中を移動中に極度に変形してしまい、銃口から打ち出された瞬間或いは飛行中に弾道を維持出来なくなってしまったりしてばらばらとしか当たりません。改善の為重い弾に替えてみると、今度は落下量が大きくなり過ぎ不安定になったりしますので、重くても少し直径の小さいものに替えてみるとかするのです。射撃は競技ではこの研究も成否内容の一つですし、猟に於ては猟獲に直結する必要事項のひとつになります。

空気銃弾は複雑な形状の小さなものを造らねばならないことから、余程の量産をしなければ商品に出来ません。単価が高くては売れません。大口径ライフル銃の弾丸なら50個で数千円取れますが、空気銃弾は五百個詰め込んでも数百円から精々二千円というところなのです。だから大口径ライフル銃のように緻密に選ぶことは出来ません。それでも数ある銘柄や微妙なサイズ違い、形状の違いから、適するペレットを選んで自分の使い道にあったセットデータとして得ることは、大口径ライフルで対象に合わせて実包を選定製作すること同様に大切なプロセスです。
たかが空気銃で、と侮らないで、自分の銃の最高のパフォーマンスをつくりだしていくのは、楽しみでもあります。

今時はいろいろな空気銃弾が、形からしてヨリドリミドリで店頭にあります。

ここに示しているのは、6mmBB弾の他は全て.177口径通称4.5mmのものです。
ライオン印ジェット弾は日本の有名ブランドです。当たらないといわれていますが、絶対的信奉者がとても多い品です。Prometheusはポリ製のワッドに合金のチップを取り付けたもの、英国製ですが、英国にはこの他多数の同種の製品があります。これは非常に軽く5グレイン(gr)程なのですが、英国は空気銃の弾速を元に所持制限をしている為、無許可で持てる弱装の空気銃で鉛の弾を飛ばしたのでは届かない距離へ到達させようという工夫です。Beeman CrowMagnumは長い弾体を呈していますが、強装の銃で発射された際に弾体の全長を維持して集弾を得る為の工夫です。RUKO Accupointのような尖った弾頭は、より侵撤性を高め、皮の厚い獣にも効果を得ようと期待したもの。RWSはドイツRUAG Ammotec(旧Dynamit Novel)のブランドで、この製品は現在重量とサイズを表記して射手の選定に寄与しようと努力しており、実に多数のラインナップを用意しています。Meisterkugelnは85年頃迄ワンサイズで7.8グレインのみ、ライフルにもピストルにも使う兼用弾でしたが、その後プリチャージ式銃の発生を見てライフル用は大体8.3グレイン、ピストル用は7グレインとし、仕上をよくしたR10マッチシリーズも用意してさらに集弾性を追求するようになり、射撃界では定番のブランドになっています。標的射撃ではよりよい弾道性能を求める為直径を微妙に増減して銃にあわせるのが宜しいとなって来たことで、4.47 〜4.52mm間1/100mm刻みで直径を変えたものを各々用意しました。またここを始めとする射撃用弾メーカーは製造ロット番号を製品に記載するのは恒例となっております。よい成績を得たロットを改めて注文することで、それと同じ製法・工具で造られたものがまた手に入れられるというサービスです。但しこれは「ひと缶だけ」注文してもなし得ず、100缶ひと箱を10箱といった単位で初めて可能になります。この分量を過大と見るのはお素人さんです。空気銃射撃は装薬銃とかなり状況が異なり、幾ら射距離10mとはいえ、初速が大層遅いことから、射手の定位力が照準以上に着弾を左右します。撃発から射出迄の間に銃が動く量が、弾速のある装薬銃に比べると非常に大きいのです。その維持訓練の為には大量の発射が練習そのものとなる為、上級射手ともなれば年に10万発も撃つのは普通です。オリンピックを見てみると、同じ選手が再びメダルを取るのは勿論、競技場で再び見かけることさえ大変珍しいですが、それは、その大量の練習環境の維持が数年という長いスパンで見るととても難しいことがそもそもの原因なのです。そのため、よい時期に急鍛練する必要があるので、せめて銃や弾といったモノは経過中に変わらないようにしたい希望が生まれますから、寄与出来るようロット番号を公示しているのです。

空気銃は競技的には射距離10mとされていますがそれはルール上のことです。人によっては50m100mの猟獲距離をもっています。しかしライフル銃であることには変わりなく、50mで中ったから10mでも中るかというとそう甘くありません。逆も又然りです。銃器そのものの性能も影響しますが、弾の適合性は各々の実行力を最大にする上で重要です。数ある中から自分の銃と目的に合わせた最良のひとつを選び出すのは大変なようですが、そのプロセスにも楽しさがあり、むしろそれを達成したら厭きてしまうかも知れない、奥深い道です。

面倒を押して銃を持つに至っていないなら、手軽に買えるソフトガンで試してみましょう。プラスチックの弾とはいえ、スーパーのゴンドラにある玩具の弾から専門店でしか買えない径や重量が厳密に量り揃えられたものまであります。どれが一番良く中るか試し出すと、同じ深みに嵌まっていくでしょう。

ソフトガンに使用するBB弾(ベアリングボールが語源)は殆どが6mm弱の直径を持つ大体真球に近く研ぎ込まれたプラスチック製の粒で、銃そのものの性能に合わせ0.1〜0.45グラムのバリエーションで用意されています。重量の軽いものは中に気泡を入れて重量を達成し、重いものは素材のうち骨材となる石質を増減させて調整しています。正確な弾着を齎す設計のものには0.25グラム程度の気泡を持たないものが適しているようですが、粒自体の加工精度が弾着に大きく影響するのは同じです。